
花守会 ~伊月庵・春 2025~「花」で一句‼ 結果発表
花守会投句企画にご参加いただきありがとうございます。
「花(桜)で一句‼」最優秀賞、優秀賞、入選の発表です。
選者/俳人 夏井いつき

◆最優秀賞(一句)
花を見た半分焼けた山で見た
多数野麻仁男
選評:口語で淡々と呟かれた言葉一つ一つが胸に突き刺さる。生き残った「花」への感嘆と、焼け果てたであろう沢山の山桜への思いが交錯する鎮魂の句。(選者/夏井いつき)

◆優秀賞(五句)
さくらさくらなんてきれいな忌み言葉
髙田祥聖
選評:桜への賛辞かと思う中七から「忌み言葉」へと展開する鮮やかな企み。「さくら」の語源説も様々あるが、言霊の国の桜は今きらきらと光をこぼす。(選者/夏井いつき)

◆優秀賞(五句)
花ひらきはじめる風と分化して
青海也緒
選評:「花」と「風」は親しい関係にあるが、「風と分化して」桜は咲き始めるのだという詩的把握が美しい。匂やかな桜季の一瞬を切り取った俳人の目。(選者/夏井いつき)

◆優秀賞(五句)
さくらひかり泣きだしさうなひかりさくら
樫の木
選評:「さくら」と「ひかり」も親しい関係にあるが、「泣きだしさうな」ほどの感動が美しいリフレインを生み出した。平仮名の優しさと切なさもまた。(選者/夏井いつき)

◆優秀賞(五句)
雨打てば花に鋼のひかりあり
巴里乃嬬
選評:雨を弾く「花」の力を「鋼のひかり」と表現した点が眼目だ。「打てば」から「あり」への展開も格調高い。花を愛した俳人黒田杏子への追悼句とも。(選者/夏井いつき)

◆優秀賞(五句)
駄菓子屋に酒置いてある江戸桜
大黒とむとむ
選評:「江戸桜」のように地名を冠した桜の名を生かすのは難しいものだが、上五中七の飄々たる取り合わせが巧い。江戸情緒ならではの味わいの一句。(選者/夏井いつき)

さくらさくら母にやさしくなる呪文
あねご
微睡むや鱗粉のごと花の降り
宇都宮駿介
隆起する樹の根に花の雨あまた
稲見里香
桜には桜の鬱が宿りゆく
門田なぎさ
さかのぼる桜の帽子を被りつつ
ちょま
青空に銀を賜る桜かな
細川鮪目
花の雨謝って食う人の肉
あいだほ
ひとひらを零さば花は散り急かん
大五郎
湖しづか釣竿しづか花しづか
はぐれ杤餅
花房のみづの重さや車椅子
花香
高架をくぐり桜をくぐり郡中線
妹のりこ
天に地に歌うようなる花万朶
ピアニシモ
桜舞う膝に眠れる猫ひとつ
下浦千登勢
昼下がり庵の床の影は花
坂本梨帆
聞き役に徹してをりぬ桜さくら
高田ちぐさ
御神事の号鼓桜の散り始む
桜井教人
地より噴き空へ吹く花を浴ぶ
亜桜みかり
花蒼し「通所」とやらに来たものの
井上れんげ
ランドセルフォト午前七時の花の下
松山マドンナ句会 桜杏織江
身の丈を知る重さうに花揺れて
麦野光
「憂い」の字覚えて桜蕊の道
川名まこと
形見分けのやうな花のやうである
きとうじん
鬼の栖や桜花爛漫歌宴
天弓
瞬間を忘れ続けるさくらかな
穗積天玲
玉梓の妹はおいらか花の旅
渥美こぶこ
春の花追う背に思ふ古希の姉
渥美妹子
よはりゆく義母のこゑ桜さくけふも
東田一鮎
朝風やさくらの翳はあをで描く
高尾里甫
果てしなきものは欲望飛花落花
大山香雪蘭
点描の地球を拡げれば桜
若狹昭宏
桜蕊降るいぢわるなベンチかな
柊木快維
潮の瀬の波ほぐれけり花の島
堀アンナ
花守会上人坂の人優し
蓼科嘉
静脈の青さ花こぼるる青さ
平本魚水
惜別は花一片の落ちるまで
理酔蓮
飲みさしに浮く花びらのさみしきを
ひでやん
ミ♯とファの違いあり桜あり
松浦麗久
ロシナンテのやうにゆっくり花の下
南亭骨太
花冷の標本木は柵の中
きさらぎ恋衣
大小のさんかくずわり花の宴
輝季
川風や花満ち満ちて水のこゑ
霧賀内蔵
手離れす花ひとひらの交じりゆく
嬉々雀躍
父と見し桜も我もある齢
のり茶づけ
咲き誇れ上人坂に師よ花よ
竜退治の騎士
夜桜やあれは誰だったのだろう
江口朔太郎
抱き上げし猫にほのかな花の香や
花心
重さうな烏の羽音花の昼
野村颯万
ダボダボの制服の肩花ヒラリ
平本牛車
有給の午後よ道後の花抜けて
マレット
子規訪ねいつき訪ねる花の旅
正岡純代
上人坂上り切ったり花守会
矢島万知子
伊月庵訪へば歓喜の桜かな
横浜月子
末社過ぐ緋袴の影花盛り
打楽器
鴉だけ真空にゐる花曇り
越智空子
夕櫻姉が姉ではないやうな
木村弩凡
さくら吸ふ薄きこの胸満たすまで
津島野イリス
赤錆びしトタンの家の雲珠桜
有村自懐
散る桜大事なものは渡せずに
依里
みな花の腕輪さやさやさくらさく
ローゼン千津
空へ溶けてく染井吉野の桜色
むめも
バタバタと来ては帰るや花篝
しみずこころ
夜桜や妻は旅行のハイボール
山尾政弘
うすみづの空に届きたくて桜
窪田ゆふ
花朧再就職の日はあした
たかみたかみ
沖縄から一人飛行機桜包む
ストロベリー
「生ききる」と言葉残してさくらさくら
和み
上人坂上りて肩に桜散る
紫羅欄花
花ふぶきなめらかな波えがく風
小物打楽器
よそいきの声のひこうやさくらの木
若狭早
花届け教え子眠るあの空へ
山尾家 水タマリ
体温をうつす遺品や花見酒
川又夕
桜美し一つしかない空へ句を
虹乃空蝉
一本の桜の見たる戦後かな
なしむらなし
車夫の指す裏参道の桜かな
DAZZA
花満ちてぷるんと掬ふ嚥下食
あいむ李景
花時やチェロの音色は空に溶け
あみま
花びらを載せてクロネコ来たりけり
イサク
さくらいろてふほかはなき花の昼
オキザリス
花筏割つてむふつと亀の鼻
くま鶉
公園へ母解き放ち夕桜
クラウド坂の上
満開の桜やがては風となる
さやじゅん
さくらさくら耳鳴りのやう波の音
じゃすみん
みづの生む灯りの重み夕桜
トウ甘藻
見納めは口癖義母と行く花見
とべのひさの
重力を騙しだまして桜散る
ののはな佐菜
花の雲放生池に小波立ち
ののはな誉茂子
城壁の隙間へ飛花の在りにけり
ペトロア
朝桜揺らし小鳥の重きこと
ほしのあお
盗蜜のすずめすずなり大桜
マリンバ
清麻呂の眼前を飛花大手濠
むげつ空
君と見る最後の桜だつたのか
めぐみの樹
花びらや月夜の風に乗るきっぷ
もぐ
八百万の神も一息つく桜
もりやま博士
花の雲忘れることは生きること
やまさきゆみ
散る桜何かあの子にできたこと
ゆすらご
巨大な綿あめワッと花満開
ゆず香
この星は時限爆弾花吹雪
ようこうよ
川向こう沸き立つ桜並木伸ぶ
ルーミイ
転職の夜をふくらむさくらかな
葦屋蛙城
花過ぎの部屋ひたひたとある鏡
綾竹あんどれ
さくらさくら無職になって三ヶ月
或人
島さくら祖母の駆け落ちした港
杏乃みずな
桜さくら櫻合同供養祭
伊藤恵美
青鬼へ桜ほろほろ紙芝居
伊予素数
幾千の兵士の墓よ桜咲く
井納蒼求
さくらさくら地球をゆるしいろにせよ
一斤染乃
初花や二〇〇〇グラムの体重米
押見げばげば
永遠の三歳児、47度目の桜
暇人
レトリバーてくてくと落花踏み行く
花ばば
獣めく太陽の塔花月夜
花節湖
赦さるるならば桜に生まれたし
岸来夢
花追うて此処は網走番外地
亀田かつおぶし
余花の庵手製の投句箱蒼し
近江菫花
ジパングのどこを切つても桜時
空木花風
桜さくら広きシートにひとりゐて
栗田すずさん
無一文でいつまで見ゆる桜かな
月下檸檬
五年目の桜や楚々と五輪ほど
原 水仙
花の昼チェロの音色は生きている
幸の実
桜咲く今日再開の水族館
幸田梓弓
カービィの歩幅で登る花の坂
広瀬康
夜桜や車切りに耐える金襦袢
紅紫あやめ
君がもう酒を飲むとは飛花落花
香奈
隆々たる染井吉野の庇護のもと
高橋寅次
二杯目の珈琲挽きぬ花の雲
高山佳風
やはらかや花には花の呼気ありて
高尾一叶
花の下歩むときみな上気して
細葉海蘭
切符買ふ朝のニュースの桜まで
桜鯛みわ
でつぷりと桜は老いて鯉の池
三浦海栗
初ざくら孔雀は青藍色を鳴く
三緒破小
シワ多き見本の図録花の雨
山城道霞
転任のあいさつ花は揺れゆれて
山羊座の千賀子
通学路ママと練習花の昼
市川こけもも
母よりも生きてニューヨーク花房
七瀬ゆきこ
汝の匂ひ抱へて眠る花の露
秋野しら露
つきとほすべき嘘桜月夜かな
十月小萩
待ちわびて花となりたるきりんかな
渋谷晶
花追風マイカー旅の朝マック
小笹いのり
上澄みの血清めける宵桜
小川さゆみ
みな空を見上げるやまひ花万朶
小野更紗
花落ちて土に見えて知るぬくみ
松井龍髭
大統領の懐に入る桜かな
沼野大統領
花守会駄句を肴に伊予の酒
須磨ひろみ
採寸の列に並べぬ吾子桜
星月彩也華
検定を走破さくらの教習所
青居 舞
はなびらに透けむつぼみのいろ桜
青水桃々
灰青の空と桜の薄墨と
青野るり子
青い目もドレッドヘアもいる桜
赤坂みずか
カーナビの道抜けられず老桜
赤味噌代
吾を軸に花びらあでやかに螺旋
千夏乃ありあり
降つてくる花はな雀さんざめき
村木年子
この町の桜と今年認められ
大槻税悦
国鉄の背もたれ硬き日の桜
池之端モルト
乗り換えを五回道後の花盛り
蜘蛛野澄香
傾城の桜まばゆき風に立つ
竹田むべ
まだ恋じゃない人といて夕桜
中村すじこ
さくらさくら心を治す苦味あり
帝菜
さくらさくら君と最期に見た桜
天雅
花の香を肺へヘパリンロックまで
天宮ほたて
日本酒の底の凹みや花の雲
天野姫城
よろこびて悲しみて今日花の下
渡海灯子
朽ちてゆく円形校舎花の雨
冬島 直
飛花落花地球は青いから回る
嶋村らぴ
半島を分ける水路や初桜
桃園ユキチ
学校の外より見たる桜かな
藤井天晴
白杖に貼りつく花びらの重さ
苫野とまや
花どきの闇より飛沫立ちにけり
内藤羊皐
ひかり満つ川へ迫り出す花の枝
二城ひかる
樹冠火の灰を被りて老桜
馬越あずき
花びらを花びらの影匂ひけり
飯村祐知子
許すなら今こそよけれ花見酒
彼方ひらく
ポトマック歴史しだるる桜かな
舞矢愛
今年またあの日の桜咲いたのね
風花まゆみ
俳人のそぞろあるくや花の山
風早杏
賜りし恩の数々さくら咲く
片栗子
花散ればそこはぶつ飛びたき美空
北藤詩旦
桜さくら白鯨いまだ息づけり
北野きのこ
浮くほどに我が身桜の中にをり
万里の森
珈琲を淹れたよ桜弾けたよ
満る
どの戸にも花の満ちたる退屈よ
岬ぷるうと
人と人繋ぐ旗とす桜かな
眠 睡花
早朝をもう炭の香の花の下
木ぼこやしき
狭間より桜隠しへ息をかけ
宥光
産声の窓へ桜の咲き始む
藍創千悠子
主人なき庭に咲初む姥桜
里山まさを
冥府にも花の浮橋ありぬべし
露草うづら
立ちこぎでくだる中坊山桜
毬雨水佳
制服に伸び代のある桜かな
洒落神戸
脳内はアリエルの歌花吹雪
鈴木富士子
花冷の海より花時の街へ
播磨陽子
櫻はらり敗戦国の酒に波紋
岡根喬平
花守会目指す車窓の共白髪
松浦恵美子
ゆきやなぎ愛でてさくらをなほ愛でる
仁
ブラシ取りふんわりほっぺ桜咲く
たなばたおんどの娘
松山やさくらさくらの花守会
七夕音頭
天を指す琥珀の御身花の寺
小山美珠
ヒジャブゐて隣はサリー花の宴
三月兎
まどろみて花にかこまれ花の散る
藍野宇宙美
[順序不同]

たくさんのご投句、ありがとうございました!
入選した皆様、おめでとうございます♪
最優秀賞、優秀賞には、夏井&カンパニーより記念品をお送りします。
最優秀賞:『夏井いつきと深める季節のことば辞典』
優秀賞:花守会セット(伊月庵通信俳句手帖&伊月庵A4トートバック)
▼花守会の当日の様子は、伊月庵予約サイトのブログで紹介しています。
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